開業したクリニックでスタッフ同士のトラブルが…防止するには?
目次
開業にあたって、不確定要素が強いのは「確保できるスタッフの質」です。やってくる人の資質による部分が大きく、しかも大変見分けにくいものだからです。中でも最も避けたいのはスタッフによって起こるトラブルです。このコラムではスタッフに起因する問題はどんなものがあるか、その原因やそうならないための対策をまとめます。
院長を悩ませるスタッフ間トラブル
トラブル事例
まずは雇用によって起こる問題事例を整理しましょう。
①面接時に期待したスキルが無い(○○のスキルはあると言ったので雇ったのに、実際はできなかった)
②やる気が無い(仕事や決まりを覚えようとしない)
③モラルが無い(嘘をつく、ミスを隠す)
④特定のスタッフと相性が悪い(個々では問題ないのに二人でいるとトラブルになる)
⑤ルーズ(出勤時間に遅れる、業務上の約束した時間に遅れる)
⑥協調性が無い(団体行動ができない、コミュニケーションがうまくとれない)
⑦一般通念にそぐわない(自由過ぎる、ルールを無視する)
⑧表裏が激しい(表面上は感じが良いが、いない人を常に悪く言う)
トラブルが起こってしまう原因
上記のような人を採用した場合、具体的にどうすればよいのでしょうか? 対策する前にまず、以下の点を振り返ってみてください。
①雇用者としてコミュニケーションが浅くないか
上記の多くは積極的にコミュニケーションを取ることで改善や緩和ができる場合もあります。まずは意識的に接触してみましょう。
②単にその人を嫌いなのではないか
人間はどうしても理解できない人を悪く思ってしまいがちです。仮にそのスタッフがスキル的には問題が無く、特定の人とだけ仲良くできないのであれば、そのもう一方の当事者に問題がある可能性もあります。
③禁止事項を明確にすれば問題ないのではないか
そもそもクリニック内のルールが不明瞭であったりルーズであったりしていないでしょうか?守るべきルールが明確であれば、それを守れていないポイントだけを注意改善すれば済みます。まずは院内のルールを見直してみましょう。
トラブルを未然に防ぐために
人材を見極める
雇用する側として言いたくなるのは「面接ではいい感じだったのに」ということではないでしょうか?誰しも仕事を求めて来ているのですから、面接の際は良い雰囲気をまとっているはずです。
短時間の面接で能力や人柄を見極めるのはむずかしい作業です。ここでは面接の際の注意点や冷静に判断するための方法を挙げます。
①できないこと、苦手なことを聞く
面接を受ける側は自分を良く見せたいはずです。そこで、あえてできないことを聞いてみましょう。これに対する答え方で、人間性や誠実さを見ることができます。この答えに対するいくつかのパターンを考えてみましょう。
・不得意は無いと言い切る……お調子者、嘘つき、心が弱い人、本当に何でもできる人のどれか
・上手く答えられない……自己評価ができない、対応力が低い、プレッシャーに弱い、のどれか
・非常に不得意なことを複数言う……正直な人、謙遜する人、本当に不器用な人のどれか
・軽く不得意なことを一つ挙げる……質問の意図を理解できる社交上手な人、本当に優れた人のどれか
②自分以外の人にもジャッジしてもらう
面接の際に他者に同席してもらったり、面接に来た時の雰囲気や礼儀、対応力などを複数の人に見てもらったりしましょう。礼儀や印象に対するジャッジは個人差がありますから、複数の意見を総合すれば、一般的意見に近づくはずです。
③質問内容はあらかじめ明確にしておく
聞くことを明確にしておき、同じ質問をしていればそれに対する受け答えを比較検討できます。
医院のコンセプトを明確にする
あらかじめ医院のコンセプトを明確にしておけば、スタッフを採用する際にも有効に活用できます。面接の際、コンセプトを話しそれに<同意や同調ができるか、と確認することで極端に合わない人を選別できます。
院内の雰囲気への配慮
院長として開業した場合、クリニック内の雰囲気は自分自身を反映したものだ、という認識を持ちましょう。アットホームな雰囲気にしたいのであれば、自分自身が明るさや暖かさを演出すべきであり、クールにしたいのであれば院長がルーズで良いはずがありません。スタッフに雰囲気を求めるのであれば、自分自身が率先して行動しましょう。
スタッフ管理術
試用期間をはっきりとしておく
雇用して数週間もすれば面接ではわからなかった問題点が見えるようになります。ですから試用期間を明確に設けておき、その期間の終わりに判断する、という世の中の認知されたシステムを利用しましょう。
ただし注意しなければならないこともあります。「試用期間」というのは法的に認められたものではありませんから、試用期間の最終日に「君は明日から来なくて良い」などと言えば不当解雇にあたります。どの時点で雇用を解除するとしても、告知の翌日から30日は雇用を続ける必要があります。
期間を決めて面談する
雇用後2か月は2週間ごとに面談する、などのルールを定めておきましょう。これは雑談ではなく、しっかりとした面談の方が望ましいと思われます。その人のスキルや資質に寄らず、不満や困ったことが無いか、と歩み寄る姿勢を打ち出すことで相手も打ち解けやすくなります。そして、雇用者として気になる点があればこの席でしっかりと話しましょう。
良い点と悪い点を整理する
雇用主として知っておくべきことは、人間の考え方、感じ方は非常に多様であるということです。雇用されている側は労働を提供してその対価を得るために仕事をしているのであって、その人との相性が良いかどうかは別の問題です。
ですから指導する際、それがスキルを伸ばすためのものなのか、行動規範を正すものなのかを明確にしましょう。良い点をしっかりと褒め、悪い点を改めるために話しているのであって、その人自体を否定しているのではない、というスタンスを貫きましょう。
まとめ
人を雇用する、というのは本当に大変な作業です。しかし一人で業務の全てを行うという選択をしない限り、その問題から逃れることはできません。雇用する側としては労働を分担するだけでなく、自分が持っていない個性をチームに加味すると考えた方が良いかもしれません。例えば院長が寡黙な方であれば明るさを受け持つ人、院長にルーズな傾向があれば、ルール順守を優先するクールな人、といった採用の仕方も良いでしょう。
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